なぜ膝に水がたまるのか? 膝の水を抜くと癖になるって本当?

はじめに
「膝に水がたまる」「膝の水を抜いたら癖になるんじゃないか?」
こんな不安や疑問をお持ちの方は多いと思います。
今回は、膝に水がたまる原因と、水を抜くことの本当の意味について、お話しします。
膝に「水」がたまるってどういうこと?
膝に「水が溜まる」と表現される状態は、医学的には「関節水腫(かんせつすいしゅ)」と呼ばれています。
膝関節は「関節包」という袋で覆われており、その内側には「滑膜(かつまく)」という組織が存在します。この滑膜から分泌される「関節液」は、膝関節の潤滑油のような役割を果たしています。正常な状態では、この関節液はごく少量で、関節の動きをスムーズにしてクッションの役割も担っています。
何らかの原因で膝関節に炎症が起きると、滑膜が刺激を受けて関節液の分泌量が増えたり、血管から液体成分が漏れ出したりします。これが「膝に水が溜まった」状態です。見た目には膝がパンパンに腫れ、触ると波打つような感覚があります。
どうして膝に水がたまるの?
膝に水がたまる主な原因はいくつかありますが、代表的なのものは次のとおりです。
・変形性膝関節症(年齢とともに膝の軟骨がすり減る)
・ケガやスポーツによる膝への負担(過度な使いすぎ)
・関節リウマチ
・痛風や偽痛風
・感染
膝の中で炎症が起きると、体を守ろうとして関節液が増えてしまいます。その結果、膝に「水」がたまるのです。
つまり、「水そのものが原因」ではなく、「膝の中で炎症やトラブルが起きた結果」と言えます。
膝の水を抜くと癖になる?
患者さんからよく「一度水を抜くと、またすぐ溜まって癖になるのでは?」という質問をいただきます。
結論から言うと、膝の水を抜いたからといって癖になることはありません。
水が再びたまるのは、「膝の炎症やトラブル」の原因がまだ続いているからです。水を抜くことで原因が解決されるわけではなく、一時的に膝の腫れや痛みを和らげる対症療法です。
たとえば、花粉症で鼻水が出るとき、ティッシュで鼻をかんでもまた鼻水が出てきます。でも、それはティッシュでかんだからではなく、鼻炎という原因があるからですよね。それと似ています。
大切なのは、「なぜ水がたまったのか」という原因を見極め、その治療を行うことです。
水を抜く処置の実際
関節穿刺(水を抜く処置)は、局所麻酔をして細い針を関節内に刺し、余分な関節液を抜き取る処置です。多くの場合、この処置自体は短時間で終わり、適切に行われれば合併症のリスクも低いものです。
水を抜くことには次のような意義があります:
・診断のため: 溜まった液体を検査することで、炎症の原因(感染や痛風など)を特定できます。
・症状緩和のため: 過剰な液体を抜くことで、膝の張りや痛みが軽減し、動きやすくなります。
・治療の一環として: 水を抜いた後に抗炎症剤などを注入することで、炎症を抑える治療を行うこともあります。
まとめ
膝に水がたまるのは、膝の中で何らかの炎症やトラブルが起きているサインです。
水を抜くことで癖になるわけではありませんが、水がたまる原因を根本から治すことが重要です。
膝の腫れや痛みが気になるときは、我慢せずに早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。原因に応じた適切な治療により、多くの場合、症状の改善が期待できます。