新型コロナワクチン接種後の肩の痛みについて
1.はじめに
新型コロナウイルスの感染に未だ、大変な日々をお過ごしのことと思います。新型コロナウイルス感染症の蔓延予防のためワクチン接種を行われている方も多いと思いますが、ワクチン接種後の副反応で発熱や倦怠感、ワクチン接種部の疼痛を訴えられる方もいらっしゃいます。今回は当院にも受診されることの多い、ワクチン接種部の痛みやそれに伴う、肩の機能障害についてお伝えしたいと思います。
2.ワクチン接種部の痛み
コロナウイルスワクチンを含め、多くのワクチンが筋肉注射で投与されます。ワクチン接種後に一時的な免疫反応で接種部位(肩や上腕)の腫れや痛みが出現することがありますが、通常は2~3日で徐々に軽快していきます。この接種部位の痛みは、カロナールやロキソニン等の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の内服で軽快することが多いです。また、遅発性のアレルギー反応として数日~1週間程度経過してから、ワクチン接種した部位のかゆみや痛み、腫れや熱感、赤みが出現することがありますが、こちらも数日で自然軽快していきます。
しかし、接種後2週間を超えて痛みなどが持続する場合、SIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administrationの頭文字をつなげた略称)という肩へのワクチン接種後に生じる肩関節障害を発生している可能性があります。
3.SIRVA(シルバ)とは
SIRVAは「ワクチン接種に関連した肩関節障害」と訳され、ワクチン接種後に生じる肩の急性炎症(肩関節周囲炎、滑液包炎、腱板炎など)で、肩の疼痛の持続・可動域制限(腕があげにくい、腕が後ろに回らない)が生じます。症状や病態は四十肩や五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎に近い状態と言われています。原因として肩の滑液包(関節の袋)内にワクチンが注入されることで生じ、長期の炎症反応を引き起こします。
4.治療法
強い肩の痛みが続く場合は、肩関節の超音波検査(エコー)やMRIで、接種部位の三角筋ではなく、肩関節の滑液包に広範囲に炎症を示す所見があれば、SIRVAが疑われます。初期の治療としては、滑液包内へのステロイド投与を検討します。
肩の痛みが長期化し、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)のようになることもあり、夜間の肩の痛みや可動域制限が持続します。放置しても自然治癒は望みにくいため、早めにリハビリテーションなどを行うことが必要です。
当院では肩関節内のステロイド注射や消炎鎮痛剤内服、リハビリや自宅での運動指導を行っています。
5.さいごに
ワクチン接種部位の痛み、腫れ、筋肉痛、関節痛は通常2~3日で軽快していき、長くても2週間以内に軽快することがほとんどです。痛みが続く場合はSIRVAや肩関節周囲炎などの可能性がありますので、ワクチン接種後に肩が痛い、肩が上がらないなどでお困りの方は早めに整形外科を受診することをお勧めします。